『岬』チャールズ・ダンブロジオ 早川書房[Amazon]


作者は、シアトル在住の現代アメリカ短編小説の旗手で、ニューヨーカー誌やパリス・レヴュー誌に短編を発表し、高い評価を得たそうです。この作品は、シアトル周辺を舞台にした、悲しみを抱えた人たち、(訳者あとがきに書いてあるように)"あるポイント"を通過した瞬間の人々を描いた7編の短編集です。表題作であり処女作の『岬』は、実に素晴らしいので紹介しておきます。

13歳の少年カートは、毎夜のように繰り広げられる、母親と友人たちのパーティで、酔った人たちを、家まで送り届ける日常を過ごしています。ここでは、母の友人である女性を送り届ける過程と、死んだ父親を回想する少年の心情が描かれています。大人と向き合い続ける少年の心、送り届ける過程での少年からの成長と、失ったもの、父への感情、砂浜と風、海、星、月、作者の少年に対する愛しく切ない描写、本当に珠玉の短編です。

岬 (Hayakawa Novels)

岬 (Hayakawa Novels)