『わが心臓の痛み』マイクル・コナリー 扶桑社[Amazon]

心臓移植を受け、連続殺人犯担当のFBI捜査官を引退していた主人公のマッケイレブの元に現われた女性はこう告げる。彼の胸の中で動いている心臓は、コンビニ強盗に遭遇して殺された彼女の妹のものだと。この事件に関わる決意をしたマッケイレブが探り出す真相とは?

主人公が事件に関わる必然性、心臓、移植、彼の捜査歴、その因縁、後半の二転、三転する捜査が、全ての伏線に繋がっていくこの巧さ!ボッシュシリーズの、陰影と孤独、その魂を前面に押し出す作風から、より成熟した抑制された雰囲気を感じられます。それが心臓移植を受けた主人公という、制約を受けた設定と巧く噛み合っています。そして何より、コナリーのミステリに対する姿勢は素晴らしいものがあります。ミステリという謎解きに対する物語に対して、真摯な姿勢を常に貫く処といい、映像解析、情報アクセスといった最新の科学捜査から謎に到達させる手法は見事です。

わが心臓の痛み

わが心臓の痛み