- 『魔術師の物語 (新潮文庫)』デイヴィッドハント, David Hunt, 高野裕美子 新潮社
- 作者: デイヴィッドハント,David Hunt,高野裕美子
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1998/12
- メディア: 文庫
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謎に包まれたティムの過去を知る魔術師の登場。色彩を判別できないという新たな視点、事件の情報の側面と意外性、それぞれが描写に圧倒的な存在感と彩りを加え、とてつもない幻惑性と美しさを醸し出す。 性の不透明性と猥雑感、存在感のある登場人物たち、事件に影を見せていくティムの双子の姉アリアン、過去の事件に関わっている刑事たち、そしてケイの父、各人の描き方が素晴らしい。あえて不満を言えば、猟奇殺人のピースとなるべき一片一片が劇的な結合を果たせなかったことかな。
- 作者: 高村薫
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 1999/02/08
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鋼を打ち、武器を手に取り、桜に酔い、夢を見る。これは、古代から続く現実だ。夢だ。
ひとりの男が生きる現実は夢であり、夢見るは、半身である友である。
工場、機械、その音、桜、銃、異邦人、その人々に囲まれ育った幼い日々、夕闇、孤独、断絶、出会い、友、親、妻、子、人が現実で出会い、夢見るもの、そして大陸へ…
これはやはり夢だ。桜の、大陸の見せた幻…
- 『わが心臓の痛み』マイクル・コナリー 扶桑社
- 作者: マイクルコナリー,Michael Connelly,古沢嘉通
- 出版社/メーカー: 扶桑社
- 発売日: 2000/05
- メディア: 単行本
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この事件に関わる決意をしたマッケイレブが探り出す真相とは?
主人公が事件に関わる必然性、心臓、移植、彼の捜査歴、その因縁、後半の二転、三転する捜査が、全ての伏線に繋がっていくこの巧さ!ボッシュシリーズの陰影と孤独、その魂を前面に押し出す作風から、より成熟した抑制された雰囲気を感じられる。それが心臓移植を受けた主人公という、制約を受けた設定と巧く噛み合っています。そして何より、コナリーのミステリに対する姿勢は素晴らしいものがある。ミステリという謎解きに対する物語に対して、真摯な姿勢を常に貫く処といい、映像解析、情報アクセスといった最新の科学捜査から謎に到達させる手法といい、僕自身にはツボです。彼はやはり最高峰の作家だと思う。
- 作者: 古泉迦十
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/09/06
- メディア: 新書
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宗教的啓示をテーマに添えた本格傑作は、まさに圧巻。
スーウィー、シーア派、神秘教団、拝火教、階梯、生と死、言葉、二元論、この時代の宗教的エッセンスを、火蛾に導かれたひとりの修行者の物語として語ることで、一の連環を啓、示してみせた本格超絶傑作。
- 作者: 安部龍太郎
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 1997/08
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- 作者: 古処誠二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2000/09
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暗闇の中、少年のひとりが死亡する。事故か?殺人か?
各キャラクターの性格、スキル・ディレクトリ・それぞれの基本設定と、感情・シチュエーションが完璧に提示され、背景にある事件・起こる事件を、提示した条件で論理的に解決に導く。実に良い本格。
- 作者: 若竹七海
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2000/07
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傑作ではないだろうか。相澤真琴と、葉崎に生まれ育った葉崎FMの渡部千秋を中心に、葉崎に立て続けに起こる事件の震源地である前田家に絡む人々を描き出す様は、まさにコージーミステリの王道。
悪意と毒の水滴を含んだ秘密、裏面、意外な人間関係がラストになって小さな印象深い波紋となって読者の前に現われる。素晴らしい!
- 『騙し絵の檻』ジル・マゴーン 東京創元社
- 作者: ジルマゴーン,Jill McGown,中村有希
- 出版社/メーカー: 東京創元社
- 発売日: 2000/12
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主人公の復讐心が尋問、調査、観察、照合、評価、比較といった徹底的な推理構築に費やされ行く趣向が、本格としての品格をこの作品に与えています。復讐心と彼の調査を手伝う元新聞記者のジャンへの気持ちで揺れ動く主人公、過去のフラッシュバックが現在の容疑者たちの意外な一面・殺人時の行動を掘り起こし、再構成するテクニックも見所です。
うん、これはすごい。品のある最高級の本格。
- 『裁かれる判事』上・下巻 スティーブ・マルティニ 集英社
- 作者: スティーヴマルティニ,Steve Martini,白石朗
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1996/11/01
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- 作者: スティーヴマルティニ,Steve Martini,白石朗
- 出版社/メーカー: 集英社
- 発売日: 1996/11/01
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- 『真実の行方』ウィリアム・ディール ベネッセコーポレーション
- 作者: ウィリアムディール,William Diehl,田村義進
- 出版社/メーカー: ベネッセコーポレーション
- 発売日: 1996/09
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- 作者: フィリップマーゴリン,Phillip Margolin,田口俊樹
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 2000/07
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- 『匿名原稿』スティーヴングリーンリーフ, Stephen Greenleaf, 黒原敏行 早川書房
- 作者: スティーヴングリーンリーフ,Stephen Greenleaf,黒原敏行
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1998/03
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- 『罪の段階』リチャード・ノースパタースン, Richard North Patterson, 東江一紀 新潮社
- 作者: リチャード・ノースパタースン,Richard North Patterson,東江一紀
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 1995/10
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- 『貴船菊の白』柴田よしき 祥伝社
- 作者: 柴田よしき
- 出版社/メーカー: 祥伝社
- 発売日: 2009/06/12
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- 『闇よ、我が手を取りたまえ』デニスレヘイン, Dennis Lehane, 鎌田三平 角川書店
- 作者: デニスレヘイン,Dennis Lehane,鎌田三平
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2000/04
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- 『黒と青』イアンランキン, Ian Rankin, 延原泰子 早川書房
黒と青―リーバス警部シリーズ (ハヤカワ・ポケット・ミステリ)
- 作者: イアンランキン,Ian Rankin,延原泰子
- 出版社/メーカー: 早川書房
- 発売日: 1998/07/01
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- 作者: 柴田よしき
- 出版社/メーカー: 文藝春秋
- 発売日: 2003/05
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今日はアールヌーヴォー展に行くつもりであったので、上野駅で待ち合わせた のだが、待ち人たるや、かの駅にて30分も迷うのである。肩を竦め、や(左に) ・れ(右に)・や(左に)・れ(右に)と、スウェーデン王室の作法にのっとり首 を振り、心から息を振り絞ってため息を吐くのは私のささやかな権利であろう。だが、敵も然る者、私の最近の老けようを当て擦りながら、くすんだあな たの巻毛は子爵級だ、と言いはなつ。かつては陛下より伯の冠を受けし我は侮辱ととり、我が手に嵌めし白きレースの手袋を相手に投げつける。決闘は上野と言うことで有馬式吹き矢である。実力通り我が相手の右眼を潰す。我がそなたの眼となろう、ただし邪眼だがな。上野では旧幕府の残党が溢れていたため、怖じ気ずいた我らは目黒にある東京都庭園美術館に赴く。『ジョルジュ・ ルース展 [幾何学形態の中の緊張]』を開催中であったのだ。廃屋となった建 物に人物画を、ついで断片的な幾何学的図形を平面に絵具で塗り「レンズを通 して像を結ぶ唯一の視点」にて三次元空間を平面世界の如く見せる手法で現し たアーティストである。私が気に入りし作品は「オルレアン」廃墟を赤で塗りつ ぶし空間的奥行きを黒の座標軸を見失わせる作品である。空間から露出する光 の行き先を暗示させる扉、廃墟の中の書、蒼の厳しさを背景に罅割れた哀しさ と光の隙間の「神戸」、空間の思想家、それがジョルジュ・ルース。
- 作者: 古処誠二
- 出版社/メーカー: 講談社
- 発売日: 2001/04
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- 作者: 谷口裕貴
- 出版社/メーカー: 徳間書店
- 発売日: 2001/05
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0年代後半、"ちっちゃいものくらぶ"に対抗し、埼玉北部のハイソな方々が結成した"だっるいものくらぶ"は夏になると熱いダルイを連呼しお互いを消耗させる素敵な趣向を持った会だ。今日はその会長に誘われ伊勢丹美術館のアール・デコ展に行った。ルネ・ラリックの無色ガラスを中心にした花瓶にはうっとりする。人の純粋な香りが匂い立つようだ。『デカンタの三つのゴブレット<六人の人物>』『三つのゴブレット〈アンドロー〉』の一式にはとても惹かれた。ガラス工芸ではスザンヌ・オーザノー『幾何学模様の瓶-ルイ・ヴィトン-』の数々などを観賞。家具ではウジェーヌ・プランツの『折畳み式テーブル<ヘクサゴン>』、やし材で象られた菱形の佇まいにテーブルランプによる陰影の浮き出方が絶妙だ。ライティングが巧い美術館で作品の良いところが見やすかった。先週が先週だったもので好きな作品の前にずっと居られるのには幸せを感じた。
- 『夏至』ル・シネマ
三姉妹の不倫、妊娠、兄への恋とそれぞれの秘密を抱えた日々を、水が満ち、弾 き、染み渡り、優しく、哀しく、生活に溶け込んだハノイを舞台に描く。家 族、愛、生活、嘘、人の葛藤よりもその場面ごとに匂いたつ官能とそれを包む 水の香りに酔いしれる映画だった。
- 作者: 小林泰三
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2001/06
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- 作者: 瀬川ことび
- 出版社/メーカー: 角川書店
- 発売日: 2000/09
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- 作者: 小林恭二
- 出版社/メーカー: 新潮社
- 発売日: 2001/05
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久世光彦は何故こんなに心地よいのだろう。登場人物たちが"なにか"にもう委 ねた存在として 在るからなのかもしれない。委ねたものは、なんなのだろう。委ねたからこそ 既に失い、得られる、心、人、美。狂える人に郷愁を、許しを。得るものは、 幻視、狂を愛し、未来をみない。花が人が散る…幻のしあわせを。わたしは羨 み狂えず委ねない自分に絶望する。