『母の残像』ヒューマントラストシネマ渋谷







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すごい……すごい映画に出逢ってしまった……著名な戦場カメラマンである女性が遺した家族への波紋を描いた作品。遠い戦場の死を、少年の幻視を、思春期の鬱屈と煌めきを、女の母の秘密を、父子の葛藤をモザイク状に配し詩的な奇跡の様なショットと計算し尽くされた時系列で魅せる。衝撃だ……ヨアキム・トリアー監督か、過去作見とかないと。実質主演の母を喪った少年を演じたデヴィン・ドルイド、繊細な少年期の痛み、その解放の演技に震えた。ジェシー・アイゼンバーグは何と孤絶した才能を持つ役者だろう。父になり息子であり兄であることが不思議に思えてならない。2016年、テクニカルで美しい映画と感じたのは個人的にこの4本だな。『母の残像』『或る終焉』『アスファルト』『さざなみ』。この衝撃は『プレイス・ビヨンド・ザ・パインズ』のデイン・デハーン以来かもしれない。逢えなかった父の死を超えていく、まだ見知らぬ母の死を超えていく。その超克の儀式描写の美しさに共通点を感じた。見逃さないで良かった。これから色々な映画館で再上映して欲しい。中心点の不在、母が見て来た世界の虐げられし存在と、家族・個が映像・演出によって接続される。身近な存在の営みのエモーショナルな表現と感情の交信。今年最も刺激的な映画だった。ユペール様出演作品は観ないと駄目だね。ユペール様出演作品が3月に控えているのね。『未来よ こんにちは』L'avenirか。ミア・ハンセン=ラブ監督作。『EDEN エデン』は祝祭と喪失のテクノ史劇でとんでもなく辛かった。そして最高なやつ。

21:05〜22:55