『幸せなひとりぼっち』ヒューマントラストシネマ渋谷








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素敵だ……素敵すぎる……余りにも深い感動に包まれて言葉が出て来ない。人生を豊かにする映画とはこういう作品のことを指すのだろう。油断すると嗚咽する。社会のルールを厳守する怒れる偏屈老人がひとつひとつの行動で描かれるのが巧い。彼が死のうとする度に隣の家族や近所の住人たちに偶然邪魔をされるどこかコミカルな現代パートと、誠実な人生を生きて来た男の亡き父や妻への愛の変遷が描かれる。普遍的な人への信頼の再生物語。巧く書けないな。映画としては平凡な語り尽くされた物語、なのだけれど語り口が絶妙なんだ。この感動はティム・バートンの『ビッグ・フィッシュ』に近いものを感じる。ここ数年観た映画では『君が生きた証』『とらわれて夏』くらい泣けてしまった。偏屈な老人が徐々に心を開いていくのがイランから来た女性、徹底的に敵視されるのが白シャツと呼ばれる役人たち、予期せぬ同居人が猫とLGBTの若者というのが現代のスウェーデン社会を反映しているのかな。主人公に慣れ親しむ近所の男も太っていると徹底していて優しい作品。

11:25〜13:30/13:45〜15:50/16:15〜18:20/18:35〜20:40