『カンパネルラ』長野まゆみ 河出文庫

kidou1999-08-03

緑に深く埋もれた祖父の家で、ひとり療養する兄の夏宿。気怠い夏の空気の中、弟の柊一は夏宿の秘密の"隠れ処"を見つけ出そうと川を遡っていった…。

この物語は、夏の既視感と深い緑のイメージ。樹木の影、川面、水藻、水草、夏の陽射し、隠れ処、硝子細工、夏の数日しか逢うことのない、兄のよそよそしい態度と弟の兄に対する心情、カンパネルラという言葉、謎の少年が夏と緑の迷宮のように迷い込ませる。