『球形の季節』 恩田陸 新潮文庫

つの高校が居並ぶ、東北のある町で奇妙な噂が次々と広がる。退屈な日常、管理された学校、眠った町。そして、少年少女たち、人間、全てを裁こうとする最後の噂が発信される。

宮部みゆきさんは、よく少年の心情を描くのが巧いといわれます。(わたしもそう思いますけど)、恩田陸さんは、少年・少女そしてこの世代の持つ独特の雰囲気と心情を、物語に取り込むのが巧いなと感じます。特別な人間になりたいと思いつつ、もう「特別な人間」になれない事もきずいている世代。こう思っているひとりひとりはもちろんのこと、その重なり合った想いも、社会のシステムと絡めて描き出し、ファンタジーとしている。そして解説に書いてあるように「場所」を物語の発生装置としています。同じく解説に、恩田さんを「夢の地理学の探求者」と表しているのは、いいえて妙だと思います。