『木曜組曲』恩田陸 徳間書店

耽美派女流作家の巨匠、重松時子。彼女が薬物死を遂げた夜に、その場に居合わせた時子と縁の深い女五人は、彼女を忍ぶために、毎年、〈うぐいす館〉に集まっている。そして、今年は4年目。
五人のたわいのない会話は、謎のメッセージをきっかけに、時子の死んだ夜、彼女についての、お互いによる告発と告白の心理戦となっていく。時子の死の真相とは…

お見事。ひとりの偉大な女流作家の呪縛、それによって文筆業に携わっている五人の女たちの本に関する考察や、それぞれ描いている本についてのちょっとした描写には、架空のものとわかっていても読みたくなってきます。
いつもの高校生たちの雰囲気と言葉も素晴らしいのですが、今回の大人の女性、それぞれ五人の人物の描きわけと、心理描写、互いの葛藤は、いつもの恩田節に加え、一本の蒼い稜線が入ったような、すっとした印象を受けました。実に素晴らしい。
本格ミステリとしての纏り具合も、文句なしです。
240ページくらいと非常に薄いので、1時間半もかからずに一気に読了できる濃密な時間を過ごさせてもらいました。
やっぱり、恩田さんは素晴らしい作家です。
これからの作品も非常に楽しみですね。