『メイン・ディッシュ』北森鴻 集英社

さてさて、今回ご紹介するのは、お料理、劇団、連作短編とわたし好みの題材がいっぱい詰まった作品です。
張り切ってイキマショー。

劇団「紅神楽」の看板女優紅林ユリエこと愛称ねこさんの部屋には、もう一匹の猫が同居しています。2本足の猫、ミケさんこと三津池修。
ミケさんは料理の魔術師といえるほどの腕前で、美味しそうな描写の数々といったら、じゅるる〜。
このふたりと、劇団「紅神楽」の代表である劇作家小杉隆一-感情移入が激しい人で、原稿に向かう時は、「我が師チェスタトンよ、我に純粋推理の叡智を与えたまえ」とノタモウテ、作者になりきった時は、凄まじい勢いで書き出す人である。これが江戸川乱歩横溝正史のうちはいいんですが、伝説の遅筆作家井上ひさしにがノリウツルト劇団員は顔が蒼くなります(笑)。そんなかんなで、独特の推理劇を作ることで劇団を引っ張っていくが、後に作家になります−いかれて好きな人物なので、つい長くなってしまいました。
この三人が中心となって、事件を引っ掻き回し解決します。
そしてこの話と交互に、ある大学生たちのグループの話が挿入されていきます。
彼らの内のひとりとミケさんが出会う話が出てきて、ふたつの話が
絡み合う時、謎ができます。彼らとミケさんの繋がりとは?

小杉師匠が自分の創った天才料理人をめぐる夫婦の物語の脚本のラストのどんでん返しに納得いかない話にミケさんが彼の作る料理に言及し、様々な人を魅了する料理の謎に迫っていく話「ストレンジ テイスト」、

仲間5人から500円ずつ受け取って絶妙のカレーを作る男の死と、彼のつくるカレーの秘密、仲間だった女の子の失踪に迫る「アリバイ レシピ」

その他にも楽しい話が満載です。劇団の成長と行末、小杉師匠のいかれっぷり、ミケさんの創り出す料理と謎解き、主人公のねこさんの語り口、どれをとっても素晴らしいです。楽しい物語でした。
『花の下にて…』に出てくる工藤さんのビアバーの描写がちょこっと出てくるのもファンには嬉しいサービスですね。
皆さんの読書の『メイン・ディッシュ』にいかがですか。