ハイペリオン海外SFノヴェルズ[Amazon]

28世紀。人類は200にのぼる惑星を転移網で結び連邦を形成していた。連邦の高度技術を管理するのは独立AI群〈テクノコア〉、その予測能力は連邦の政策能力をも左右する。〈テクノコア〉にすら予測できない不確定要素が存在する。辺境にある惑星ハイペリオンである。そこには、謎の遺跡〈時間の墓標〉があり、時を超越した怪物シュライクが人々の信仰を集めていた。〈時間の墓標〉を取りまく抗エントロピー場が膨張し、とらわれているシュライクが解き放たれようとするとき、宇宙の蛮族アウスターがハイペリオンに侵攻を開始する。〈時間の墓標〉がアウスターの手に落ちる前に、謎を解明できるか、そのことに連邦の命運がかかってくる。かくして、惑星ハイペリオンに因縁浅からぬ七人がこの謎を追う最後の巡礼として集い、〈時間の墓標〉をめざす旅に出る。その途上で語られる、それぞれが背負った数奇な宿命とは…

1990年度ヒューゴー賞ローカス賞受賞

ジョン・キーツの物語詩『ハイペリオン』『ハイペリオンの没落』を下敷きにしたSF叙事詩スペースオペラサイバーパンク、宗教、神、神話、ハードボイルド、秘境探検、時間、機械、戦闘、恒星間戦争、怪物、詩、進化、《聖樹船》《終末の地球》《スキマー》《EMV》《FORCE》《森霊修道会》《最後の贖罪教会》《苦痛の神》《群狼船団》《ヘブンズ・ゲイト》《転移システム》《雲門》宇宙、未来…全てが物語る"SF"そのものの物語。

ハイペリオン』では、七人の巡礼の内の六人の物語が、オムニバスの物語として語られていきます。

第一章
『司祭の物語』
カトリック教会神父ルナール・ホイトが、考古学者であり、文化人類学者であり、聖テイヤール信奉者であるポール・デュレ神父の記録を日記形式で語っていく。秘境探検物の雰囲気を持った物語。デュレ神父はハイペリオンの謎の民族ビクラ族を探しに奥地へと向かう。そこでであったビクラ族の恐るべき生態。章の最後の圧倒的なイメージ、十字架、神父、雷鳴、恐るべき…物語。

第二章
『兵士の物語』
導入部の巧さが光る作品。仮想戦術シミュレーションでの仮想戦場の舞台は1415年、ヘンリー5世率いるイングランド軍に長弓兵として参加していたカッサードはフランス軍の騎兵と戦っていた。そこである女と出会い、愛し合う。その後もシミュレーションの中で出会うふたり。カッサードが、戦いの果てにハイペリオンで見たものとは…この物語での"兵士"として、戦いまくります。宇宙船での戦い、シュライクとの格闘など、様々な戦闘シーンが楽しめます。

第三章
『詩人の物語』
今は無き、地球に生まれ、400年の流転の生を生きる詩人の物語。黄昏の地球から始まる、絢爛豪華、雑多、ポップ、レトロ、サイバー、虚飾、汚物、詩が彩る物語。

第四章
『学者の物語』
M・ワイントラウブの娘レイチェルは、ハイペリオンの〈時間の墓標〉の調査に行き、時間遡行症にかかり、どんどん、若返っていく。毎日の記憶を失い、幼くなっていく娘、それを見守る父と母。

何という…物語なのでしょう。親、子、夫婦、父、娘、愛、絆、笑顔、言葉、その運命…悲しみとか、感動とかを超えた、とにかく、泣ける話です。わたしにとって大切な物語の仲間入りです。『アルジャーノンに花束を』『リプレイ』路線の話が好きな方は、是非。

第五章
『探偵の物語』
女探偵、M・レイミアのもとに現れた美形の依頼人。「ある殺人について調べて欲しい」「殺されたのは?」「…僕だ」物語の核心のひとつである〈テクノコア〉にかかわってくる物語。依頼人はサイブリッド。人間の遺伝子ストックから象った肉体を持ち、〈テクノコア〉のメガデータスフィア・データブレーンに浮かんだ意識をもつAIだった。要するに、彼にとって殺されるとは、意識が中断され、バックアップに欠損が出たことを言う。かくして捜査をすることとなったM・レイミア。サイバーパンク・ハードボイルド・ラブストーリー。

第六章
『領事の物語』
ハイペリオン領事が語る、量子船に乗っているため、年のとりかたの違う、宇宙船乗りと、島の娘の恋物語。年をとる女、年をとらない男、不思議な逢瀬と、政治、環境、惑星、その結末。そして、領事の運命。

最高の…物語です。
特に、『ハイペリオン』 第四章『学者の物語』は、たくさんの人に読んで欲しいです。まあ、これだけというのは、よくないかもしれないけど。

ハイペリオン (海外SFノヴェルズ)

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