『ディア ノーバディ』バーリー・ドハティ 新潮社[Amazon]


受験を控えた18歳の少年クリスと少女ヘレンとの間にひとつの命が宿る。イギリスの児童文学最高の栄誉である1992年度カーネギー賞受賞作。

ヘレンは宿った命に「ノーバディ」(だれでもない者)と名づけ、その命に戸惑いながら、母やクリスへの繋がり、距離や、想いを、ノーバディへ綴り宛てた手紙を書く、その手紙とひたすらヘレンを求める心、小さい頃別れた母との交流、周りの、等身大の大人たちの生き方から得るもの、未来への想い、それらのクリスの回想によって構成された物語です。

この物語を語るには、訳者である中川千尋さんのあとがきにある最初の言葉が相応しいので、紹介しておきます。

ひとつの命が生れるまでには、なにかしら物語があります。いつの時代でも、人は様々な想いに揺れ涙や笑みをこぼした末に父や母となってきたはずです。

命と、それらを取り巻く人たち、10代という性、とても未熟だけど、それでも人は、それぞれの生を真摯に生きていく。命を受け止めていくということ。自分を受け止めていくこと。シェフィールドを舞台にした真摯な生の物語でした。

ディア ノーバディ (新潮文庫)

ディア ノーバディ (新潮文庫)