『海底のUボート基地』ハモンド・イネス ハヤカワ文庫NV[Amazon]

英独開戦の間際、新聞記者クレイグは、漁師のローガンと共に、Uボートでイギリスに潜入したドイツ軍のスパイを尾行するが、逆に囚われ、拉致されてしまう。拉致された先は、海中の洞窟に建設された巨大なドイツ潜水艦基地であった。クレイグたちは、潜水艦奪取と基地破壊を狙い、戦いをはじめる。

実に構成が巧い。第一部に描かれる漁師としてだけでなく、人間としての大きさを垣間見せるローガンの描かれ方、スパイをめぐる冒険、ドイツ潜水艦の死闘の描きかた。第二部の、第一部に示される謎の説かれ方を、女流推理作家による電報による書簡形式で行なう巧妙さ。第三部のクレイグたちの脱出行と闘い。冒険小説のもつカタルシスは味わえませんが、基本を忠実に抑えたなかなかの佳作でした。

海底のUボート基地 (ハヤカワ文庫 NV 60)

海底のUボート基地 (ハヤカワ文庫 NV 60)