『ナイロビの蜂』目黒シネマ

原作はスパイ小説の大家ジョン・ル・カレ。ル・カレの描く個人と対峙する敵としての国家は冷戦時代のイデオロギーから経済を選ぶものとして描かれています。忠誠を尽くしていた国家から裏切られる個人としての闘いがここでも描かれるのは同じ。ただ、物語の主題は映画としてはあくまで、亡き妻を知ろうとし、疑心や贖罪の思いを抱きながら妻と同じ道をたどるひとりの男の愛が描かれています。彼が知るこの土地の命の軽さとひとりの命さえ救えないアフリカという現実。悲しい現実を抱えながらも美しい大地で妻の幻影と語り合うラストには涙しました。むかしの映画の良さを味あわせてくれた作品でしたね。