『とらわれて夏』新宿武蔵野館


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素晴らしい!ジェイソン・ライトマンは良い意味でも悪い意味でも現代的なシニカルさをもったシャープな作風の監督だと思っていたのだが、この作品では詩的な叙情性に酔わされ驚いた。脱獄犯でありながら、男であり雄であり父であるカリスマ性を持つ、その一番の魅力の描き方が料理というのが非常に巧い。手先の官能、触れ合う悦びが、ふたりの縮まる距離に作用する。フラッシュバックで描かれる愛の記憶と罪は、ふたり共に抱える贖罪と愛への渇望を見据え、ふたりを見つめる少年の思春期の目覚めの揺らぎと不安定さがスリリングな緊張感を生んでいる。『ネブラスカ』『MAD』『8月の家族たち』と観てきて思ったのは、映画は再び20世紀の文学的なものを語り出し始めたのかもしれない。