『團菊祭五月大歌舞伎』歌舞伎座

夜の部
一、伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)
御殿
床下
〈御殿〉


〈床下〉
乳人政岡
栄御前
一子千松
鶴千代
沖の井
八汐


仁木弾正
荒獅子男之助

菊之助
雀右衛門
丑之助
種太郎
米吉
歌六


團十郎
右團次

河竹黙阿弥
二、四千両小判梅葉(しせんりょうこばんのうめのは)
四谷見附より牢内言渡しまで
野州無宿富蔵
数見役

女房おさよ
番役
浅草無宿才次郎
伊丹屋徳太郎
番役
黒川隼人
寺島無宿長太郎
生馬の眼八
田舎役者萬九郎
浜田左内
うどん屋六兵衛
隅の隠居
牢名主松島奥五郎
石出帯刀
藤岡藤十郎
松緑
彦三郎
坂東亀蔵
梅枝
歌昇
萬太郎
巳之助
種之助
鷹之資
左近
橘太郎
松江
権十郎
彌十郎
團蔵
歌六
楽善
梅玉

夜の部
一、伽羅先代萩(めいぼくせんだいはぎ)
乳人政岡の忠義と、大敵仁木弾正の妖しさ
 乳人の政岡は、御家横領を企む執権の仁木弾正の一味から幼い鶴千代を守るため、御殿の奥で若君のための食事を用意しています。そこへ見舞いと称してやって来た栄御前が、持参した菓子を鶴千代に勧めるので、毒入りではないかと政岡は警戒。すると、政岡の息子千松はそれを察して飛び出すと菓子を口にします。俄かに苦しみ出した千松を、弾正の妹八汐は懐刀でなぶり殺しますが、我が子の無残な姿を前にしても動じない様子を見て、栄御前はすっかり気を許すと、政岡に御家横領の証拠となる連判状を渡します。一人になった政岡は、若君のため身替りにという教えを守った千松を褒め讃えますが、母としての深い悲しみに打ちひしがれます…。そんななか、1匹の鼠が突如現れると、連判状を咥えて去っていきます。御殿の床下では、鶴千代を守る荒獅子男之助が鼠と対峙すると、やがて仁木弾正が姿を現わし…。
 江戸初期に起こった三大御家騒動の一つ「伊達騒動」を題材とした作品のなかでも代表作といえるのが『伽羅先代萩』です。我が子を殺されながらも忠義を尽くす乳人政岡の苦衷を描く「御殿」と、妖術を

二、四千両小判梅葉(しせんりょうこばんのうめのは)
江戸最大の御金蔵破りをもとにした異色作
 江戸城を囲む外堀。夜も更けた四谷見附の堀端で、おでん屋台の商いをしている富蔵は、偶然通りかかった藤岡藤十郎と再会します。藤十郎は富蔵が以前勤めていた屋敷の恩義ある若旦那。遊女に入れ上げ金に困っている藤十郎は、恋敵の徳太郎から100両を奪おうとやって来たのでした。藤十郎の話を聞き、どうせ悪事を働くなら大きな仕事をと、江戸城の御金蔵破りを持ちかけます。後日、首尾よく御金蔵から4000両を盗み出した富蔵と藤十郎。事件のほとぼりが冷めるのを待った富蔵でしたが、生き別れた母に会うために向かった先の加賀で捕らえられてしまいます。江戸に護送される途上、熊谷の土手では別れた女房おさよが娘と父六兵衛とともに駆けつけ、降りしきる雪のなかで別れを惜しみます。やがて伝馬町の牢に入れられた富蔵は…。
 幕末に江戸城で起きた御金蔵破りは、前代未聞の大事件でした。白浪物を得意とした名作者の河竹黙阿弥が、明治18(1885)年に初演した本作は、二人組の盗賊の役名に実名を用いるなど真に迫った内容で、特に牢内の様子が鮮明に描かれたことが評判を呼びました。町人ながらふてぶてしい富蔵と、武士でありながら小心者の藤十郎の性格の対照も印象的な、異色の白浪物をお楽しみください。