1999-08-01から1ヶ月間の記事一覧

『メイン・ディッシュ』北森鴻 集英社

さてさて、今回ご紹介するのは、お料理、劇団、連作短編とわたし好みの題材がいっぱい詰まった作品です。 張り切ってイキマショー。劇団「紅神楽」の看板女優紅林ユリエこと愛称ねこさんの部屋には、もう一匹の猫が同居しています。2本足の猫、ミケさんこと…

『狐罠』北森鴻 講談社

宇佐美陶子は"冬狐堂"を屋号とし、骨董業界にあって、店舗を持たず業者間に商品を流通させる"旗師"を生業にしている。 ある日、陶子は橘薫堂の主人橘に目利き殺しを仕掛けられ、贋作を つかまされる。 保険会社の調査員鄭富健から、国立博物館と橘薫堂の癒着…

『花の下にて春死なむ』北森鴻 講談社

三軒茶屋駅近辺にある香菜里屋に、客が持ち込む事件を、マスター工藤哲也が解き明かす連作短編集です。孤独死した老俳人の住む窓辺の桜は、なぜ季節外れの花をつけたのか。老俳人の過去から導き出される人生とは。 駅においてある本棚のなかにある山本周五郎…

『象と耳鳴り』恩田陸 祥伝社

驚きました。恩田さんが、こんなに本格に思い入れがあるなんて。元裁判官の主人公と息子の検察官の関係もエラリー・クイーンを思い起こさせる設定で面白いですし、相変わらず、キャラも立っています。 一編一編の仕掛けもなかなかの出来栄えで、散歩好きな僕…

『木曜組曲』恩田陸 徳間書店

耽美派女流作家の巨匠、重松時子。彼女が薬物死を遂げた夜に、その場に居合わせた時子と縁の深い女五人は、彼女を忍ぶために、毎年、〈うぐいす館〉に集まっている。そして、今年は4年目。 五人のたわいのない会話は、謎のメッセージをきっかけに、時子の死…

『六番目の小夜子』恩田陸 新潮社

ある地方の高校に伝わる三年に一度、学園祭で行われるゲームは、学校に関わる運命を占えるといわれていた。それは一人の生徒によって行われ、受け継がれる。その生徒は「サヨコ」と呼ばれることとなり、それを執り行うのだった。そして、六番目のサヨコの年…

『球形の季節』 恩田陸 新潮文庫

つの高校が居並ぶ、東北のある町で奇妙な噂が次々と広がる。退屈な日常、管理された学校、眠った町。そして、少年少女たち、人間、全てを裁こうとする最後の噂が発信される。宮部みゆきさんは、よく少年の心情を描くのが巧いといわれます。(わたしもそう思い…

『光の帝国』恩田陸 集英社

ストーリーは常野と呼ばれる不思議な能力を持った一族に関わる人々を描いた連作短編集です。一編一編が不思議なリンクをして、巨大な物語の続きを連想させます。恩田陸の物語は日常、郷愁、ファンタジー、救い、絶望、希望と様々なものを取り込んだ不思議な…

『スティルライフ』池澤夏樹 中央公論社

「外に立つ世界とは別に、きみの中にも、一つの世界がある。 きみは自分の内部の広大な薄明の世界を想像してみることができる。きみの意識はふたつの世界の境界の上にいる。大事なのは、山脈や、人や、染色工場や,せみ時雨などからなる外の世界と、君の中に…

『碧空』 長野まゆみ 集英社

凛一は華道の家元を継ぐ少年、京都の大学でフットボールをしている氷川と恋をしている。ある日、凛一は写真部で現像をしているとき、一つ上の学年の有沢改と知り合う。 彼らは揺れる。彼らの周りの人たちと共に…相変わらず、端正で瑞々しく、巧緻極まる細工…

『テレヴィジョン・シティ』長野まゆみ 河出文庫

鐶の星で管理されたビルディングで生活をする少年たち。アナナスは遥か彼方の碧い惑星に住む便宜上の父・母である、パパ・ノエル、ママ・ダリアに手紙を送ることを生きがいにしていた。部屋での同居人、イーイーとの友情や確執、手首を締め付けるリング、テ…

『カンパネルラ』長野まゆみ 河出文庫

緑に深く埋もれた祖父の家で、ひとり療養する兄の夏宿。気怠い夏の空気の中、弟の柊一は夏宿の秘密の"隠れ処"を見つけ出そうと川を遡っていった…。この物語は、夏の既視感と深い緑のイメージ。樹木の影、川面、水藻、水草、夏の陽射し、隠れ処、硝子細工、夏…

長野まゆみ

『綺羅星波止場』長野まゆみ あとがき 硝子越しの物語より この頃、作品の透明度ということを考えている。性的な内容や描写を扱うかどうかは問題ではない。出現する世界を、裸眼ではなく、一枚の澄明な硝子を透かしたように書かねば不可ないと思っている。そ…